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煙草

わたしはニコチン中毒だ。

火を見るよりあきらかに、わたしの肺は汚れていく。

 

オリンピックに向けて飲食店でタバコが吸えなくなったら、どうしよう。

最近よく考える。コーヒーにタバコ、文庫本にタバコ、あらゆる余白に毒の煙、アイコスじゃだめで、わたしの中で燻るタバコへの憧れはあんな機械じゃ満たせない。

選んだライターで火をつける、灰が落ちる、ちょっとの力で折れてしまう、不便で愛おしい紙巻のタバコと、喫煙に付随する文化、景色が、好き。

 

ビタミンや、喉の粘膜や、いい匂いを灰皿に捨てることと引き換えに、憧れてしまったものに憧れ続ける自由を手にしている。

肺癌は怖い、嫌われるのもいや。でも、「交通事故が怖いからどこにもいかない」はしたくなくて、今日もライターを弾く。

 

タバコを手にする動機はたいてい憧れか、暇だ。

憧れを植えられて、植えて、お金を吐き出して、吐き出させて、あらゆる余白を煙に巻いたら、意味のない沈黙の瞬間も、匂いの伴った記憶になる。

 

「彼の肺が、わたしの思惑通りに汚れ続けることを想うと、少しだけしあわせ」